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日本語の対人関係表現(敬語)
待遇の程度
敬語は、相手に対する「待遇の程度」を表す。表現の丁寧さの多さは、待遇の高さと比例する。
親しさの程度
親しいほど、丁寧さが低くなり、敬語での丁寧表現が少なくなる。
若い世代ほど、敬語の必要性を感じないという傾向があるのは、学生と社会人の対人関係の質の変化が関係する。学生時代の人間関係は、
基本的には利害関係ではないため、気分感情が関係性の基準となるが、社会人では利害関係やその他様々な関係が、関係性の基準となるた
め、親しさにも関係性の種類が発生する。そのため敬語は必然となる。
距離
身尺度が心的な距離感に影響する(経験則)
親密な関係:腕の長さ以内、おおよそ120センチ
親しい関係:身長以内から、腕の長さまで
Art
日本語の対人関係表現の丁寧さは、時間と距離が長いほど丁寧になります。
丁寧になるほど、語数が多くなるということは、同じ時間単位で表現する情報量が少なくなります。従って、限られた時間でより正確に表
現するためには、結論から話すことも重要な要素となります。
時間の長さ
語数が多いほど丁寧になる。語数が多いと、同じ情報量を伝えるのに時間がかかります。
「連絡くれ」―>「連絡ください」―>「ご連絡くださいませ」
「分からん」―>「分かりません」―>「分かりかねます」
Point
語尾(です、ます)をつけると丁寧になる。
①すごい!
②嫌や
③面白い。
④ええやんか。
⑤うそー!
⑥テレビ見た?
⑦何してたん?
Point1
主語(人称)をつけると、よりさらに丁寧になる。
Point2
主語を一人称にすると、さらに丁寧になる。
◎練習1
「ねえ、右から2番目のカレ、イケてない?」
「でも、あの人分かりモノらしいよ」
「でも、なんとかしたいなあ」
「いい雰囲気になっちゃえば、がんばれー」
「昨日、のっちばあちゃんとメールしたんよ」
「めっちゃ、面白いらしいなあ」
「洋服もきらびやかで」
「うちのばあちゃんにも、負けんくらい若いらしいやん」
距離の長さ
自分と周囲の人間関係を比較して、自分側か自分の外側かを区別して表現を変えます。
自分と年長者(ex社長)
社長に対面している時
自分は社長に対して丁寧に話す。
周囲が同じ会社のグループであるとき
自分は社長のことに関して対して丁寧に話す。
周囲が異なる会社の時
自分は社長のことより、周囲の異なる会社に関して丁寧に話す。
日本語の敬語システムは、
謙譲語、尊敬語は上下関係よりも、上下関係を含んだ立場の距離感を表す、
内側言葉と外側言葉です。
従って、主語の表現が省略されても、周囲の関係性から、主語が特定できる合理的な言語システムです。
Work
敬語(日本語の対人関係表現)は、基本的には熟練作業で上手になります。
古典が難しいのは、言葉が変化しているからです。
現在でも敬語表現はよりカジュアルな方向に変化していますので、おおよその状況では丁寧語で充分です。
それでも、正式な敬語が重要だと思われるなら、下記のワークシートでどうぞ。
*対人関係表現(敬語)完全
履修ワークシート(.pdf)
Note
時代とともに変化する敬語表現
・明治25年、梨本宮伊都子妃の日記
「天皇陛下、玉座に入らせられ、一同に拝謁を給わり、非常に御意にかなひよし。ご機嫌うるわしく、午後還幸あらせらる」
・2004年 紀宮記者会見
「天皇陛下よりご裁可頂きましたこと、誠にありがたく存じております。天皇、皇后両陛下には温かくお見守りを頂き…」
敬語表現は時間がかかる。より早さが要求冴える時代には、その要求にあった話し方に変化していくのが自然の成り行きである。
敬意低減
「きさま(貴様)」は、中世には武家の書面で上位に対する尊称として使われたが、19世紀初めに対等の相手に使われ、現在では罵り言
葉となった。
「おまえ(御前)」は、遠い前方という意味だったが、その後対等の立場に使う言葉となり、現在では目下に使う言葉となった。
「あなた」あっちの方、距離的に遠い方であったが、江戸時代中期に対等にまたは、貴方という漢字をあてて、上位に使う表現となった。
「ぼく(僕)」しもべ、下僕という意味であった。現在では男性が自称する一般的な言葉となった。
「~せて頂く」
内側(謙譲)語は使いにくいので、その代わりに進出したと考えられる。
「休業させて頂きます」
「午後1時から営業させて頂きます」
「司会を努めさせて頂きます」
この語の前身は「~してもらう」という「やりもらい表現」で、江戸中期に発生した。「~てもらいます」は関西人が特に使った。「もら
う」という受恵表現で、相手への気持ちを表現して、敬語の代わりに使うようになった。その後「~せてもうら」が「~せて頂く」に変化
した。